研究概要RESEARCH
負荷適応微生物学研究室では、主に以下のような研究をしています。この他にも、大学院生や研究員の興味に沿った研究テーマも取り入れています。
カビの環境応答と細胞内代謝の分子生物学
私たちは、細菌や酵母とは異なるユニークな生物群である「糸状菌(カビ)」に着目した研究を進めています。カビというと悪者のイメージが多いでしょうが、世の中には酒や味噌を作る麹(こうじ)菌や、ペニシリンなどの抗生物質を作るカビのように我々の生活に役に立つ良いカビもいます。
このような有益なカビをよりよく利用するためには、「カビの細胞の中で何が起きているか?」を知ることが重要です。例えば、「良いお酒を造るためには良い麹を造る」ことが大切ですが、それでは「どうしたら良いものが作れるのか」、「どうしたら沢山作れるのか」というと、「カビの細胞の中で起きている代謝を明らかとする基礎研究が重要」となるのです。
私たちは、具体的には、麹菌と類縁のカビであるAspergillus nidulansをモデルとして、環境中の酸素、窒素、硫黄などの低分子化合物が菌類の生き方(=代謝)にどのような影響を与えるのか、菌はそれらとどのように付き合っているのかを解明しようとしています。カビの分子生物学のトップレベルの技術を駆使することによって、多くの研究者が手掛けることのできなかった新たな研究を展開しています。
触媒活性を持つ酵素の探索と解析
微生物の多様性を反映して、微生物由来の酵素には無限ともいえるほど多様な種類の反応を触媒するものが知られています。しかし、これまで知られていない未知の反応を触媒する酵素を発見しようとする研究者は意外と少ないものです。私たちは、これまでに、このような酵素を生産する細菌・酵母・カビを多数発見し、その酵素(遺伝子)や生理機能を解明してきました。このために、化学、工学的手法も駆使した独自のアイデアを取り入れた研究を進めています。あなたも、微生物から世界で初めてのXXX酵素を発見して、その基礎・応用研究をしてみませんか?
新たなバイオリファイナリー技術の開発
バイオテクノロジーの主役は、昔も今も微生物です。独特の代謝能を持つ微生物や新しい酵素が見つかったら、それらを役立てる応用研究を目指しています。これらの新しい研究材料を持っているのは世界中で私たちだけですから、得られる成果は世界初の実用化技術の開発につながると信じています。
現在の主なターゲットは、新たなバイオ材料の開発・生産、有用脂質の微生物生産などです。特に、植物バイオマスを原料とした新たな高機能性プラスチック原料の発酵生産に興味を持って研究を進めています。